牛肉の色が変わる理由とは?科学的に徹底解説|買ってすぐ赤くないのは問題?

冷蔵庫に入れておいた牛肉の色が、買ったときよりも茶色っぽくなっている……そんな経験はありませんか?
「腐っているのかな?」「食べても大丈夫?」と不安になる方も多いでしょう。
実は、牛肉の色の変化は自然現象であり、必ずしも「腐敗」を意味するわけではありません。
本記事では、牛肉の色が変わるメカニズムを科学的な視点からわかりやすく解説し、見分け方・保存方法・食べても安全かどうかの判断基準までお伝えします。

この記事の監修者:うしまる
北海道の元農協職員。15年以上、肉用牛農家の経営支援
ファイナンス設計・新規事業立ち上げを経験。
現在は「牛肉会」の編集長として、科学的かつ実務に基づいた牛肉情報を発信中。
牛肉の色の基本:赤い色の正体は「ミオグロビン」
牛肉の鮮やかな赤色は、「ミオグロビン」というたんぱく質が関係しています。
ミオグロビンは筋肉内で酸素を運ぶ役割を持っており、酸素と結びつくことで赤く見えるのです。
(参考資料:一般社団法人食肉科学技術研究所ホームページ「科研コラム#12」http://www.shokunikukaken.jp/topics/438/)
▶︎ ミオグロビンの酸化状態と色の変化
状態 | 色 | 化学的名称 |
---|---|---|
酸化型ミオグロビン(オキシミオグロビン) | 明るい赤 | 新鮮に見える |
還元型ミオグロビン | 紫がかった赤 | 真空パックでよく見られる |
メトミオグロビン | 茶褐色 | 酸化が進んだ状態 |
牛肉の色が茶色になるのはなぜ?
牛肉が茶色く見える主な原因は、ミオグロビンの酸化です。
冷蔵庫に入れていても、空気中の酸素と接触することで時間と共にミオグロビンは「メトミオグロビン」に変化します。これにより、赤かった肉が茶色やグレーがかった色合いに変化するのです。
(参考資料:農研機構 抗酸化能測定値と牛肉の変色時期の関係 )
▶︎ 色が変わっても食べられるケース
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表面のみ変色している
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においに異常がない
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表面のぬめりがない
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消費期限内である
これらの条件を満たす場合は、色が変わっていても問題なく食べられることが多いです。
食べてはいけない変色の見分け方
一方で、色の変化が「腐敗」を示している場合もあります。以下のチェックポイントに当てはまる場合は、食べるのを避けてください。
❌ 腐敗のサイン
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緑色・黒っぽく変色
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強烈なアンモニア臭・腐敗臭
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糸を引くぬめり
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消費期限切れ
とくに、色・臭い・ぬめりの3点セットが揃っている場合は、細菌が繁殖している可能性が高いです。
真空パック牛肉が「赤くない」のはなぜ?
ECサイトやふるさと納税で届いた真空パックの牛肉が、赤くなくて「えっ?」と思った経験がある方もいるかもしれません。
これは、酸素と触れていないため、還元型ミオグロビン状態であるからです。袋を開封し、空気に触れると鮮やかな赤色に戻ることが多いので、心配はいりません。
牛肉の色変化を抑える保存方法
牛肉をできるだけ鮮やかな赤色のまま保つには、以下のような保存方法が効果的です。
▶︎ ラップ+ジップロック+冷凍
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表面にラップをぴったり密着させる
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ジップロックに入れて空気を抜く
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冷凍庫へ保存(-18℃以下推奨)
色の変化と栄養価への影響はある?
栄養価の面で見ると、色の変化によってミオグロビンの一部が失活することはありますが、牛肉全体のたんぱく質やビタミンB群などの栄養素は大きく変わりません。
実際に「日本食品標準成分表2023年版(八訂)」によれば、以下のような栄養成分が含まれています。
▶︎ 例:和牛肩ロース(生・脂身付き・100gあたり)
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エネルギー:411kcal
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たんぱく質:11.7g
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脂質:39.4g
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ビタミンB12:2.1μg
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鉄分:0.8mg
つまり、「色が少し変わっても栄養価は十分にある」と言えるのです。
まとめ|色の変化=腐敗ではない
牛肉の色が変わるのは、ミオグロビンの酸化による自然な現象です。
色の変化だけで判断せず、臭いやぬめり、消費期限など複合的にチェックしましょう。
また、色が変わっても栄養価は大きく変わらないため、上手に保存して、美味しく安心して牛肉を楽しんでください。